伊那谷のお菓子を楽しんで!想いを込めて夢を描く「夢ケーキ」
菓匠Shimizu
伊那市のお菓子屋さん「菓匠Shimizu」では、毎年8月8日を「夢ケーキの日」(日本記念日協会認定)と制定し、子どもたちの描く夢を本物のケーキにして届けるイベント「夢ケーキ」を開催しています。アーモンドの粉と砂糖、水飴でできたねんど状のお菓子「マジパン」を好きな形に成形し、世界にひとつだけのオリジナルケーキをつくる同イベントは、お菓子づくりを通して大切な人との団欒の時間を過ごしてほしいとの思いから2006年にスタート。多くの人が集まる人気イベントで、近年では全国各地で出張イベントが開催されるほど大人気のケーキ作り体験会になりました。
どこにでもあるケーキづくり体験とは一味も二味も違う、菓匠Shimizuの「夢ケーキ」づくりのようすを覗いてきました。
伊那市の「菓匠shimizu」2F、「Pont des Arts」がステージ
ショーケースには色とりどりのケーキが並ぶ
食料品店やドラックストアがならび、その周辺には田畑の広がるのどかな街の一角。伊那谷の人々の暮らしに寄り添うように「菓匠Shimizu」はあります。まるでおとぎ話に出てくるような可愛らしい外観。バラのアプローチを抜け一歩店内に足を踏み入れれば、甘い香りと色とりどりのケーキやお菓子が並ぶ、筆者も足繁く通う伊那谷を代表するお菓子屋さんです。
この日、店舗2階のカフェ「Pont des Arts(ポンデザール)」に集まったのは、一般応募で集まった15組のご家族。午前と午後2回に分けてイベントに参加しました。
まさに職人技!パティシエによるデモンストレーション
まずは、パティシエによるデモンストレーションで基本を学びます。
使用するのは、黄・緑・青・黒・茶・赤・薄橙・白の8色のマジパン。違う色をこね合わせて新しい色をつくったり、マジパンスティックと呼ばれる道具で模様をつけたり……パティシエの大きな手から小さくて繊細なパーツが次々と生み出される様子に子どもたちの視線は釘付け。
あっという間に表情豊かで可愛らしいマジパン人形ができあがりました。洋服のボタンや髪の毛、帽子の模様まで細かく再現されており、まさに職人技。参加者からも「すご~い!」「かわいい~!」と思わず歓声があがります。
パティシエの作ったマジパン人形と薔薇の花。チョコペンシルでスラスラと文字入れもしてくれた
自分たちの「夢」をケーキにしてみよう
かっこいいパティシエの技を見たら、ますます自分でやってみたくなっちゃうのが子どもたち。ワクワクが隠せません。いよいよみんなも挑戦します!
マジパンは、小麦粉やねんどよりも柔らかくてベタベタした触り心地。触れていると手の温度でやわからくなってくるので、ねんどをこねるのとはまた違ったコツがいります。難しいところがあれば、パティシエがテーブルを回ってコツを教えてくれます。
この「夢ケーキ」が、どこにでもあるケーキづくり体験と違うのは、子どもたちの「夢」をケーキにするところです。
夢シート
「将来の夢は何ですか?」「夢を叶えて喜ばせたい人は誰ですか?」「将来の夢の絵を描きましょう」などの質問が書かれた「夢シート」を、大切な人と語り合いながら完成させるところから夢ケーキづくりは始まっています。事前に描いてきた夢シートのイラストを参考に、思い思いにつくる作品はみんな個性的。
「ぼくは、ゲームのプログラマーになりたい」
「将来の夢は幼稚園の先生になることです」
「はやぶさの運転手さんになりたい」
会場の楽しい雰囲気に、親子の会話も弾みます。口々に夢を語る子どもたちに、一緒に参加したお父さんお母さんも目を細めます。「子どもが将来何になりたいか、初めて聞きました」と話す方もいらっしゃいました。
約1時間、マジパンづくりを楽しんだら、あらかじめお店で用意してくれた直径12センチのケーキ台に飾り付けます。白いクリームのシンプルなケーキ台が、みんなの夢で賑やかに大変身。さらに、いちごやブルーベリーを飾れば、より一層瑞々しく華やかな夢ケーキの完成です。
ありがとうを言葉に。大切な人との距離が縮まる場面に感激
ケーキづくりの最後に、参加者に家族への「ありがとう」を発表してもらいます。
「いつもご飯やお洗濯をしてくれてありがとう」「お仕事がんばってくれてありがとう」
ちょっぴり照れながら、まっすぐに感謝の気持ちを伝える子どもたちの姿に、筆者もうるうるしてしまいます。
「生まれてきてくれてありがとう」「子育ては大変だけれど、子どもたちのおかげで毎日楽しいです。ありがとう」お父さんお母さんも、子どもたちに応えます。たくさんのありがとうの言葉に会場全体が温かい空気に包まれました。
日々一緒に過ごす家族でも、子どもが将来どんな大人になりたいかじっくり向き合って話を聞いてあげる時間はなかなか持てないかもしれません。子ども自身も、自分の夢を改めて考える機会を持ったり、家族とそれを語りあったという思い出は一緒にケーキをつくるということ以上に心に深く残ることと思います。夢ケーキづくりを通して大切な人との距離がぐっと縮まる、素敵な場面に立ち会わせていただきました。今度は私も、息子と一緒に参加したいと思います。
「作っているのはお菓子じゃない、夢なんだ」
「ただお菓子を作って売るっていうのは、つまらん。お菓子を通じて世界中の子どもたちに夢を与えたい。俺たちが作っているのは、お菓子じゃなくて夢なんです」
そう話すのは、菓匠Shimizuの代表でシェフパティシエの清水慎一さん。
清水さんが、夢ケーキをスタートさせたのは2006年のこと。当時、中学生の少年が父親を刃物で切りつけるという悲しい事件が起きましたが、それがきっかけだったと言います。「もし少年と父親が、夢を語り合えるような家族団欒の時間を持てていたらその事件は起きなかったのではないか……?お菓子以外の価値として、実態あるものを提供できていたら……そう考えてスタートしたのがこの夢ケーキなのです」
8は漢字で「八=末広がり」、向きを変えれば「∞=無限大」の記号になることから、夢を無限大に広げてほしいという想いを込めて、8が重なる8月8日を「夢ケーキの日」として制定しました。
現在では、店舗イベントのほか小・中学校、高校、養護施設、孤児院など全国各地で開催し、14年間でのべ3万人の子どもたちが夢ケーキに想いを込めて夢を描いてきました。
みなさんも夢ケーキづくりを体験して、おいしくて楽しい夢を描きませんか?
◆夢ケーキを体験するには
夢ケーキについてもっと知りたい方は、
菓匠Shimizu公式サイトをご覧ください。
◆菓匠Shimizu
〒396-0006
長野県伊那市上牧清水町6608
TEL:0265-72-2915
FAX:0265-76-8622
*この記事の情報は、令和2年8月に取材をし、令和5年8月に更新をしたものです。