みんなの体験記
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「入野谷山&分杭峠 ジオ・エコ登山ツアー(初心者向け)」に参加してきました
入野谷山&分杭峠
2020年10月3日、伊那市観光協会が企画実施した「入野谷山(いりのややま)&分杭峠(ぶんくいとうげ)ジオ・エコ登山ツアー【初心者向け】」に参加してきました。今まで登山経験のない私は、少しの不安を抱きつつの参加でしたが、秋のすがすがしい気候に包まれながら、山頂付近で美しいパノラマを一望することができ、すっかり登山の虜になってしまいました。道中では各所に設けられているポイントで休憩をとり、次第に変わっていく景色をゆっくりと味わう事ができました。
大パノラマを目指し登山スタート
伊那市内から車で50分ほど走ったところが今回の集合場所「粟沢駐車場」です。当日朝の天候はあいにくの曇り空。山頂に着いた時には雲が流れていることを願いつつ、集合場所へ車を走らせます。

今回は、コロナ感染防止対策の為、長野県内在住の参加者15名とツアースタッフ3名での登山となりました。シャトルバスに乗り込み10分程で分杭峠へ。ここには、トイレと休憩スペースがあります。ここから先は常設のトイレがない為、こちらで済ませておくことをお勧めします。
針葉樹と広葉樹が共生する混合樹林をバックに、スタッフさんから説明を受けました。
「入野谷山、は南アルプスの西側にある前衛峰の一つで、標高1,172m、登山道の全長は片道約2.5km。道中、伊那谷を眼下に中央アルプスから北アルプスまでの大パノラマを望めることができるので楽しみに」―とのことでした。
早速登山スタートです。尾根から望めるという大パノラマを目指して、いざ出発。この時青空が…期待に胸が膨らみます。
道すがら、小さな見どころいっぱい
登山口から進むと程なく、「風の丘」というポイントに到着です。風の丘というだけあって気持ちが良い風が吹き、笹の揺らぐ音に癒されます。この一面の笹は「隈笹(くまざさ)」という品種です。めったに花が咲かず、数十年に一度だけ花を咲かすのだそうです。ぜひ、そのタイミングで登ってみたいと思いました。
ふと視線を落とすと、苔の色がとても鮮やかで目に止まりました。ツアーに参加された地元の方によると、南アルプスの苔は他の山域のものに比べて色が鮮やかなのだそうです。稜線に比較的平坦な地形が広がっていることが関係しているとのことです。
鮮やかな色の苔
登山道は歩きやすく整備されており快適。写真のように赤いテープが枝や幹に付けられているので、これを目印に登っていきます。
スタートから約1㎞で「結いの桂(ゆいのかつら)」に到着。桂の葉のあま~い香りが辺りに漂います。少し小さめの桂の木が女性、写真の立派な大木は男性を意味しており、あま~い夫婦関係を象徴しているとのこと。(縁結びのご利益もあるとか!)
「結いの桂」から少し進むと丸太3本の木橋が目の前に。手作り感のある木橋に少し緊張してしまいますが、心配な方は橋を渡らず回避もできます。私は橋を無事横断!参加者の方々も慎重に渡り、こんなスリルも登山の醍醐味?!この近くには湧水スポットもあります。復路で立ち寄るとのことで後程の楽しみに。
途中の分かれ道。「光のテラス」は、光が差し込む癒しスポットとのことですが、今回は入野谷山パノラマ尾根の頭へ向かいます。
遂に入野谷山の山頂に到着です。しかし、ここがゴールではありません。大パノラマが望める絶景ポイントまで、更になだらかな道を歩きます。すっかり秋模様の山頂付近で、ひと際目立っていた「ナデシコ」、花びらが風に揺られて美しかったです。
ナデシコの花が風に揺れる
ススキがきれい
やったー!大パノラマ
出発から2時間30分。遂に到着です!こちらが絶景の峰、「パノラマ尾根の頭」です。奥から雲の合間にかすむ北アルプス、中央アルプス、南アルプスと中央アルプスの間にある伊那山地の戸倉山(とぐらやま)、高烏谷山(たかずややま)など、はっきりと見ることができました。もっとスッキリ晴れていたら、北アルプスもきれいに見えただろうになと思いましたが…でも、気分爽快。登ってきた甲斐がありました
ジオパークガイドさんの話を聞く!
目的地に着いたところで、ジオパークガイドの森川裕司(もりかわ ひろし)さんから、ジオパークの成り立ちについて説明を伺いました。実際の山の上で専門家のお話を聞けるのはとても貴重な体験です。

遠くに見える中央アルプス(駒ヶ根)のお椀型の白い模様。これを「千畳敷カール(せんじょうじきカール)」と呼びますが、この模様は氷河時代に氷河が流れて削れた跡だそうです。
また、私が立つ入野谷山の下を走る、世界第一級の断層といわれる「中央構造線」は、関東から九州まで繋がる深い谷。日本列島が形成されるよりもさらに昔の約1億年前にできたという西南日本を縦断する大きな大きな断層なのだそうです。

今回は立ち寄りルートに入っていませんが、この断層が地表に文字通り「線」のような地層となって表れている「露頭(ろとう)」と呼ばれるところも、登り口の伊那市長谷地域や、そこから分杭峠を越えた大鹿村のあちらこちらに点在しているそうです。いま流行りの地層ファンにはお勧めですね。森川さんのお話を聞き、大地の成り立ちを身近に感じることができました。
お話が終わったところでお昼休憩。標高が高いので体が冷えます。あらかじめ持ってきていた防寒着を着て、各々景色の良い場所に敷物を敷き、持参した昼食を食べます。自分の足で登った山頂でのごはんは格別です。このツアーで始めて出会った方々とも、最近登った山の話、自分で耕している畑の話、漬物の漬け方などの話に花が咲きます。こんな話が聞けるのも、低山ツアーの楽しみの一つです。
自然の恵みに心も潤う
エネルギー補給と休憩も済んだところで、帰路に着きました。来た道と同じ道を下っていきます。下りは、スピードが早くなってしまいがちですが、「同じペースで歩くことが疲れないポイントだ」と、スタッフさんからアドバイスがありました。
帰りの楽しみにしていた「希望の泉」。分杭峠でも水は汲めますが、こちらが源泉とのこと。早速その場でいただきました。

「うん、美味しい!」

登山で渇いた喉にスーっとしみ込む感じ。この源泉は硬水とのこと。私は硬水はどうしても喉の奥がチクチクしてしまい苦手ですが、ここのお水は本当に硬水!?と驚くほどおいしく飲むことができました。持ち帰りもできるとのことなので、水筒の持参をお勧めします。
高山植物の「センブリ」の仲間。繊細な模様が可愛らしかったです。
帰路のあちらこちらに、登りでは気が付かなかったキノコを発見。スタッフさんが1週間前に歩いた時には、あまり目に付かなかったとのこと。山の季節は刻一刻、姿を変えて行くのですね。手に取ってじっと見ていると「それは食べられないよ!」と参加者の方が教えてくれました。

参加者との話や、道中の植物に気を取られている間に、気づけば登山口まで帰ってきていました。今回の登山ツアーは休憩を含めて5時間半ほどの道のりで、初心者の私には丁度よく、足の疲れなどもあまり感じずに帰ってくることができました。
パワースポット「分杭峠」を散策
下山後は、分杭峠の散策です。杭を分ける峠という名前のとおり伊那市長谷(旧上伊那郡長谷村)と下伊那郡大鹿村の境に位置し、峠の最高標高は1,424m。明確な始点や終点は無く、総延長は4kmにも満たない短い峠だとのこと。ジオガイドの森川さんから、峠と分水界の話を伺った後、私は、パワースポットとしても有名な分杭峠の「気場」(きば)にも行ってきました。
ここは「ゼロ磁場」とも言われています。

ゼロ地場とは、太古からの地層が地殻変動などで複雑に変動している場所で、地盤に刻印された「磁場」が乱れて、磁石で方位を調べようとしても、針がくるくる回って測定できないようなところを指すのだそうです。
気場の斜面に木製のベンチが設置されていて、多くの方が「気」を体験していました。感じ方は人それぞれだとか…? 気になる方は、是非行ってみてくださいね。
あとがき
ツアースタッフさんの話によると、入野谷山に登山道が完成したのが2014年4月。登山道としての歴史はまだ浅い!?ですが、各ポイントの看板なども手作りで、地元の方の想いやあたたかみを感じることができました。
今回、登山道を作った方にお話しを伺う機会がありました。当時、カラマツだらけだった山の中で、「パノラマ尾根の頭」を見つけ、「分杭峠に新たな魅力を作りたい!」との想いで、何もないところから登山道を一から作り上げた時の様子を伺うことができ、それまで何気なく歩いていた登山道がとてもありがたく、また身近に感じることができました。

ゆったりと山歩きを楽しみたい方、登山の経験が少ない方にもぜひお勧めしたい場所です。分杭峠に来たら、峠と入野谷山をぜひ一緒に楽しんでいただきたいと思います。

伊那市観光協会が企画するジオ・エコ登山ツアーだけでなく、個人やご家族で訪れても、きっと伊那谷の良さを満喫できますよ。
※冬季閉鎖。2020年は11月23日(月)まで通行可
お問い合わせ・参考サイト

◆伊那市観光協会 公式サイト
TEL.0265-78-4111 ㈹

*この記事の情報は、令和2年11月30日現在の情報です。

伊那路木曽路トレイルガイド

伊那市ホームページ
みんなの体験記ライター
投稿者宮川 沙加
年代20代
趣味温泉、ヨガ、お菓子作り
自己紹介なんとなくの直感と、人との繋がりで伊那谷へ移住してきました。 旦那さんと農ある暮らしの実現に向け、ゆるりと修行中。