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世界最古のオーケストラ!伊那谷で「雅楽」を体験しました!
大宮五十鈴神社
「雅楽(ががく)」は、日本で約1000年前に大成され、演奏形式や音色がほぼ変わらず現在まで伝承されています。いくつもの楽器で合奏する音楽として一番古い起源を持ち、その奏者たちは世界最古のオーケストラといわれています。もともとは神様に奉納するための音楽・舞として始まったもので、明治時代には雅楽局という公的な部署が作られ、名前を変えながら今も宮内庁に専門部署が残る、日本の重要無形文化財です。
そのような由緒ある雅楽の演奏を、この伊那谷でも体験できる場所があると聞き、訪ねてきました。
伊那谷の神主さんたちが作った伊那雅楽会
今回、体験を受け入れてくださったのは伊那雅楽会で、この日の会場は、駒ヶ根市にある約1700年ほどの歴史をもつ大宮五十鈴神社(おおみやいすずじんじゃ)。伊那雅楽会は、昭和55年に伊那谷の神職の方たちが中心となり結成し、現在も雅楽の普及に務めている会です。体験で訪れた日は、特別に大宮五十鈴神社の拝殿で演奏が行われるという日。一緒に参加した方と「伊那谷で雅楽ができるなんて知らなかった」とワクワクしながら、紅葉できれいに染まった境内を歩き拝殿に向かいました。

会場では、5名の神職の方が演奏を披露。この日、使用された楽器は笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)、楽箏(がくそう)、楽太鼓(がくだいこ)、鞨鼓(かっこ)。名前だけ見ると馴染みのない楽器ばかりですが、曲の合間には楽器の紹介もしてくださいました。

雅楽はどんな音楽かを言葉で伝えるのは難しいですが、神前結婚式などで流れる音楽や年末年始にプォーッといった竹の楽器の音とともに聞こえる音楽というと想像がつくでしょうか。雅楽を生で聞くのは初めてのことで、聞き慣れない音の集まりに思わず圧倒されました。それと同時に、「日本といえば」を表現したような、どこか懐かしさも感じる不思議な感覚がありました。

主旋律を担うことが多い、篳篥という15センチメートルほどの笛は、葦などで作るダブルリードの笛でオーボエのような音がしていました。大陸から来た楽器も改良しながら雅楽の形が作られたという話もしていただきましたが、現代もオーケストラなどでよく耳にする楽器に似たものが、約1000年も前から日本にあったのかと思うと、とても興味深くて、演奏を耳よりも頭で感じていた気がします。

さまざまなところに雅楽独自のルールがあります。例えば楽箏は鶏足(けいそく)と呼ばれる鶏の足を模した手の形から弾き始めるという決まりや、管楽器の曲を止めていく順番は龍笛、篳篥、笙の順など、聞かなければ知らなかったことばかりで、知的好奇心が掻き立てられる内容でした。

演奏の終盤には神楽も2曲披露され、舞と合わさった雅楽の美しさや、神様に奉納するための舞の凛とした空気、シャンと響きわたる鈴の音に、神聖さを感じ思わず見入ってしまいました。
笙(しょう):17本の竹が組み合わさり和音を奏する楽器、オルガンのような音色
龍笛(りゅうてき):天の声と地の声を繋げる龍の名で表されるように雅楽の中では広音域の楽器
篳篥(ひちりき):葦などでできたダブルリードの縦笛。短いが豊かな表現力。主旋律を担うことが多い。
楽箏(がくそう):見た目は琴だが、やや弦が太く、竹製の爪など琴とやや異なる。リズムを示す役割
鞨鼓(かっこ):曲を始める合図や、雅楽のリズムを担う鼓。楽太鼓(がくだいこ):音楽の節目で鳴らし曲の統率を図る太鼓。大きな火焔形の装飾のあるものは火焔太鼓とも呼ばれる
世襲制だった雅楽
「越天楽(えんてんらく)という曲は3行からできていて…」と、曲や楽器の解説をお聞きしていると「どんな楽譜を見て弾いているのだろう?」という疑問が湧いてきました。お願いし見せていただくと、カタカナと漢数字で綴られた譜面でした。楽長の花畑さんの話によると、楽譜ができたのは明治時代になってからとのこと。「楽家」と呼ばれる世襲制の家で、親から子へと1000年もの長い間、口伝えで雅楽は伝えられてきたといわれています。

楽譜ができた今でも、習い方は、まずカタカナの歌い方を師匠に教わって覚えてから、それを楽器で表現するそうです。「楽譜があっても師匠がいないとできない音楽です。宮内庁では楽器を持つまでに2年間は歌を覚えるという話もあるそうですよ」と花畑さんは話してくれました。自分の生活からは想像できない世界を垣間見たようで、とても興味深かったです。
ユーモアあふれる神職の方のおはなし
雅楽体験に参加して、雅楽以外にも魅力的だったのは、神職の方々のお話を伺えることです。皆さん思わずクスッと笑ってしまう小噺(こばなし)を交えながらお話ししてくださいました。それぞれの神職の方が、ご自身の神社や地域の話をしてくださったので、伊那谷に住んでいる私も普段とは違う視点で地域を見ることができました。

宮司を務める白鳥さんは、神社の名前の由来から始まり、駒ヶ根という地がヤマトタケルノミコトと深いご縁がある地だと、古事記の話を交えつつお話ししてくれました。

駒ヶ根市の周りに流れる、太田切川、中田切川、与田切川の「田切川」という名前は荒々しい川という意味があるそうです。ヤマトタケルノミコトが、大和へ帰るために太田切川を渡ろうとしたとき、川が荒々しくて渡れず困っていたところ、山から神馬が降りてきて助けてくれたという話がこの地域に残っているそうです。

駒ヶ岳の由来はこの話から来ているという説や、その駒ヶ岳の根元にあるから駒ヶ根となったという駒ヶ根市の由来の話も合わせて知ることができました。また、「駒ヶ根の小学校のうち3校と中学校のうち1校の4校が同じ校歌を歌っていて、2番の歌詞にヤマトタケルノミコトの歌詞があるんです」と、古事記から繋がる現代の話をしてくださいました。

いろいろな方がご自分の「地域」について語るとき、その方々の生業や興味によって見えている世界が変わってくるのは興味深いものです。神職の方たちが「駒ケ根」について語る時には、やはり神事や古事記の神様など、そうした切り口からのものになるのだなぁと思い、この地域の新たな一面を教えていただいたと感じました。
今回の体験は、新型ウイルス感染防止対策として、演奏やお話を聞くプログラムでした。通常は、楽器を実際に習い、曲の一部を演奏できるようになる2時間ほどの体験を行っているそうです。音楽を通して1000年前の日本と繋がる不思議な体験を伊那谷でしてみませんか? 伊那谷に住んでいる人にも、是非おすすめしたい体験です。
■雅楽を体験するには
連絡先 伊那雅楽会
長野県伊那市東春近4281-1
TEL 0265-73-3431
実施時期 通年(要予約)
費用 4500円/人
最少催行人数 3名
所要時間2~3時間

*この記事の情報は、令和2年12月22日現在の情報です。

■伊那雅楽会のブログはこちら
みんなの体験記ライター
投稿者羽場友理枝
年代30代
趣味合気道、カフェ巡り
自己紹介伊那谷にUターンして、仲間と畑を耕しながら農ある暮らしを模索中。栗の甘露煮、梅シロップ、数々の漬物…こうしたものに時間をかけられる丁寧で豊かな暮らしに憧れています。
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