みんなの体験記
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生きる力を取り戻そう。森の中の「テントサウナ」
四徳温泉キャンプ場
待ちに待った休日。今日くらいは仕事や日常を忘れてリラックスしよう。そう思っても、気付いたら来週のことを考えてしまったり、結局スマホばかり見て逆に疲れて1日が終わる…。

そんな経験、誰しもあると思います。私もまさにその一人です。何も考えずにリフレッシュする方法はないものかと考えていた矢先、最近流行りの「テントサウナ(テント型フィンランド式サウナ)」を手軽に楽しめる人気の「四徳温泉キャンプ場」を勧められ、日帰りで、体験しにいくことにしました。

森の中でサウナ体験ができると評判の同施設。休み下手の私も本当にリフレッシュできるのか、サウナはどんな気持ちよさなのか、リアルな体験談をみなさんにお伝えできたらと思います。
温泉とキャンプ。森の中で癒されるアウトドアフィールド
「四徳温泉キャンプ場」は、温泉とキャンプ場、サウナが一体になったアウトドア施設。「日本で最も美しい村連合」に加盟している中川村の山奥にあります。車で谷あいに入っていき、川沿いの小道を走っていくと、豊かな森の中にキャンプサイトの看板が見えてきました。森は丁寧に手入れがされているようで、さんさんと太陽の光が木々の隙間から差しています。
「日本で最も美しい村」にも選ばれた中川村
鹿が描かれた手作りの看板が四徳温泉キャンプ場入り口の目印
「こんにちは。お待ちしてました!」

キャンプ場に到着すると、この施設を運営している米山達也(よねやま たつや)さんが優しく迎え入れてくれました。

四徳温泉キャンプ場は、「人間本来の生命力回復のための、森の休日」をコンセプトに、温泉とキャンプを融合させたユニークなアウトドア施設。四徳温泉は昔からの湯治場であり、昭和30年代まで湯治の為の温泉宿が2軒ありました。温泉は元亀3年に開湯、450年の歴史を持つ名湯で、多くの人々を癒してきました。代表の久保田雄大(くぼた ゆうだい)さんと、副代表の米山さんの他、若いメンバーがいま現在、この施設を運営しています。

敷地内には、大小様々なキャンプサイト、ログハウス風のコテージ、温泉施設、小川が点在しており、まさに「森の中のキャンプ場」といった感じ。
ログハウス風のトイレや橋は、なんと米山さんの手作り。森の随所に遊び心が散りばめられて散歩するだけでもワクワクします
「植林をしてから50年以上が経ち、うっそうとしてしまった森に、徐々に手を入れながら、キャンプサイトを少しずつ拡大し、その木材を使って施設を手作りしています。コテージやトイレ付きのキャンプサイトもあれば、少し離れたところにある森の中でキャンプができる文字どおり“フォレストサイト”もあり、ビギナーからベテランまで楽しめる作りになっています」

森の手入れ、橋やログハウスまでほとんどを手作りしているそうで、米山さん自身がこの森にとても愛着があるのをお話から感じます。
抗菌&リラックス効果。生きる力を高めるテントサウナ
一通り散策を終えていよいよ、実際にテントサウナを体験。

サウナを体験する場所に行くと、煙突がついた緑色のテントが。煙突からはもくもくと煙が上がっています。中に入ってみると、米山さんが火を焚いてくれているようです。
使われているテントサウナはサウナの本場であるフィンランド製のSavotta
「いまストーブで焼き石を温めています。この石に水をかけると、水蒸気がテントの中に充満して暖かくなるんです。かける水は、この辺りで採れたクロモジという木を煮出したアロマ水です。とっても良い香りがして、まさに森のアロマを全身で浴びることになり、気持ちいいですよ。」

クロモジにはリラックス効果のあるリナロールという成分がたっぷりと含まれているほか、抗菌抗ウイルス効果もあり、免疫も高めてくれます。

おすすめの入り方は、15分サウナに入って、15分外気に触れたり川の中に入って体を冷ましたりするのを3セットほど繰り返す方法だそう。

テントに入っていくと、室内は思ったより天井が高く、5~6人は入れそうな広さです。用意されている木の椅子に腰掛けながら、柄杓(ひしゃく)で水をすくい、焼き石にかけていきます。

「プシュー」という音とともに、水蒸気が勢いよくテントの中に充満します。クロモジの爽やかな香りとともに、焼き石に熱せられた蒸気が体を包み、体がどんどん暑くなっていきます。ただ、よくある日本のサウナ室と違って、暑すぎず、とても心地よい温度。温度計を見ると80℃ほど(日本の一般的なサウナは約100℃)です。

体温が上がっていくと、だんだん自分の毛穴が開いていくような感覚があり、汗がタラタラと吹き出していきます。
「プシュー」という音が心地良い
空気と体が溶けて一つになっていく不思議な感覚
テントサウナに入って最初は、「熱いなあ」だとか「そういえば、あの原稿いつまでだっけ?」といった風に意識があちらこちらにいって気が散っていたのですが、汗がタラタラと体を伝うくらいになってくると、自分の呼吸や、火がパチパチとなる音に意識が向きだして、だんだん何も考えなくなり、無心になっているような感覚に。

すると、あっという間に15分がたち、ジッパーを開けてテントサウナの外へ。外はジャンパーを着ていないと寒いくらいの気温でしたが、Tシャツ短パンで出ても寒さを全く感じません。むしろ気持ちが良く、そのまま米山さんが準備してくれたシートの上に寝そべります。
ととのい中…
しばらく仰向けに寝ていると、体の周りに薄い膜のようなものが張り付く感覚があり、ポカポカしてきます。10分ほど寝ていると、サウナで開いていた毛穴が閉じて汗が引き始めるので、再度サウナテントの中へ。

15分たって再び外に出ると米山さんが

「今度は川にダイブしてみても気持ちいいですよ!外気温とサウナ気温の差が大きいほど脳内からエンドロフィンが出て、リラックス効果があるんです」

とおすすめしてくれたので、恐る恐る川に飛び込みます。米山さんいわく、少しずつ入るとかえって寒いので、一気に入ってしまうのがポイント。

キリッと冷えた川の水に、一気に毛穴と心臓がキュッと縮こまるのを感じます。あまりの冷たさに一瞬「ひゃっ!」と変な声が出るのを抑えて1分ほど浸かり、川から出てそのままシートの上に横になります。
思いきり飛び込むのがコツ
水の中では正直、気持ち良さを感じなかったのですが、川から上がった後、ここで不思議な感覚を体験します。再び横になると、頭がフワフワしてきて、横になっているのか、立っているのか、平衡感覚が薄れていきます。さらに外気と体の境界線が溶けて、一体になっていくような感覚に。

「これが“ととのう”っていうことなのかもしれない…」

3セット目に入る頃には、ほとんど何も余計なことを考えなくなり、さながら瞑想状態になっていました。

この感覚はぜひ体験して味わって欲しい…!
ととのい中…
テントサウナを実際にやってみて感じたことは、ヨガや瞑想で行うマインドフルネスに近い体験がサウナだと比較的気軽にできるだけでなく、自然を感じながらデトックスできるので、考えごとの多いビジネスパーソンや、普段自然に触れる機会の少ない都会の方にもおすすめの体験だということ。

お客さんはソロで来る人もいれば、友人とキャンプしがてら利用する人も多いそう。ひとり静かにでも、みんなでワイワイととのっても楽しそうです。
アウトドアを通じて、森を豊かに。四徳温泉キャンプ場の挑戦
「テントサウナのおかげでこれまでのキャンパー以外のお客さんも増えましたね」と米山さん。

四徳温泉キャンプ場では、サウナの他にも、7つの提携キャンプ場が定額で使い放題になるキャンプのサブスクリプションサービス「CAMP LIFER」(https://www.nagano-camp.life/)も2020年8月から始めたのだとか。国内初の取り組みで全国からも注目を集めています。

これまでにない、新しいキャンプ場の楽しみ方を発信し続けている背景には、キャンプ場での様々な自然体験を通じて「自然と共生した持続可能な未来についてみんなで考えたい」という思いがあると言います。

実は昔から、この辺り一帯は四徳村と呼ばれ、木材搬出が盛んだった戦後は500人規模の集落がありました。昭和36年の三六災害で大被害を受け、全住民が離村し移住したことは、伊那谷の災害史の中でも有名です。平成の時代になり、中川村役場と元住民が協力し、温泉と森を活かすべくキャンプ場を建設しましたが、経営は最近までうまくいっていませんでした。

「小さい時からこの辺りの山は遊び場で、よく自転車で来ていました。自分も愛着のあるこの土地を管理させてもらえることになり、そしたら元住民のおじいちゃんたちが、“ふるさと四徳を頼むな”って言ってくれて。森は手を入れなかったら荒れてしまうから、キャンプをインターフェイスに、都会の人も、地元の人も巻き込んで、森に少しずつ手を入れることで、みんなが森と繋がる、そして森を次世代に繋げる活動しています」

米山さんたちの活躍もあり、再びこの四徳温泉には光が差し始めていると言えます。
大工の祖父、ログビルダーの父を持つ米山さんは、小さい時から森や自然と共にある暮らしを実践してきました
キャンプ場では合成洗剤の使用を禁止したり、環境に配慮したキャンパーを育成するための国際組織「Leave No Trace」とパートナーシップも組んでワークショップなども開催しています。

その他にも、地元の農家さんやクラフト作家さんの出店や、アーティストとともに森の中で音楽を楽しむ「音泉縁日」、自然・人のつながりを取り戻すキャンプ場の会員制度「むらびと制度」など魅力的なコンテンツが盛りだくさん。

四徳温泉キャンプ場でアウトドアするということは、自然を消費する単なるレジャー体験を超えて、自然とともにある、サスティナブルな暮らし方を作っていく一員にもなれる、意義深い体験なのだと感じました。
むらびと祭。「ただいま!」「おかえり!」と声をかけあえる森の仲間に出会えます(写真はサイトから転載)
疲れた心と体をととのえながら、自然とも調和した生き方を学べる貴重な体験ができる、他にないキャンプ場。また冬が明けたら、遊びに行きたいと思う、体験になりました。

ちょっと疲れたら、自然とのつながりや本来の自分を取り戻す、森の中の休日を楽しんでみてはいかがでしょうか。
四徳温泉キャンプ場
【施設情報】 http://shitoku.net/
【予約】http://shitoku.net/%e3%82%b5%e3%82%a6%e3%83%8a/
【所要時間】約2時間
【持ち物】サウナ着(水着・短パン・Tシャツなど、体の締め付けが少なく、速乾性のもの推奨)、水筒(水・お茶推奨、アルコールは控えめに。水分は多めにお持ち下さい)、サンダル、タオル、サウナからでたら羽織れるパーカー・ガウンなど、マイチェア(必要な方)
【留意点】サウナ後に温泉に入りたい方は、温泉の営業時間を要チェックhttp://shitoku.net/%e6%b8%a9%e6%b3%89-2

*この記事の情報は、令和3年2月に取材したものです。令和5年8月現在、四徳温泉キャンプ場のサウナのサービスはバージョンアップし、離れのキャンプサイト「Kuwabara Camp」にて毎週末利用可能です(8月は変則的に拡大営業)。詳細は四徳温泉キャンプ場HPをご覧ください。
みんなの体験記ライター
投稿者北埜航太
年代20代
趣味カフェ、古民家、歴史ある町めぐり、ジブリ
自己紹介東京の文京区から辰野町に移り住みました。無垢の暮らしが残る、自然体の伊那谷が好きです。そんな伊那谷の雰囲気そのままに飾らない言葉で伝えられるように頑張ります。
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