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秋陽に湖畔を彩る10,000本のもみじ もみじ湖(箕輪ダム)を訪ねて
もみじ湖
長野県のほぼ中央に位置する諏訪湖を水源として南へ流れる天竜川沿いに伊那谷があります。伊那谷北部に位置するのが箕輪町です。その箕輪町で、晩秋、10月下旬から11月上旬頃に、もみじ湖(箕輪ダム)の湖畔一帯に植えられた10,000本以上のもみじが紅葉が見頃を迎え、蒼天に映える赤と水面に映る山の木々が、見事な景観となって、訪ねる人々を楽しませてくれます。

もみじ湖(箕輪ダム)は、昭和55年に着工され平成4年に完成した人造湖。伊那谷北部の上水道を支えるこのダムの建設にあたり、それ以前にこの地に住んでいた人々は、移住を余儀なくされました。その時に、「これから何年も先に人が訪れる名所となるように」との願いを込めて植えられたもみじが、それから約30年を経て、伊那谷の秋を代表する景勝地となっているのです。

もみじ湖を抜けた先にある景勝地

箕輪町の東側の山々から流れる川が平地へ出る場所に広がる扇状地。伊那側と諏訪側の境に位置する守屋山から流れる沢川の上流に、もみじの群生地があります。長岡地区から沢川沿いにはしる国道442号線を車で登っていきます。もみじ湖の周囲へ辿り着くまでは、曲がりくねったり、すれ違いが難しい細い箇所があります。

視界が明けて箕輪ダムを右下に眺めることのできる地点まで進むと、湖畔にもみじ並木が始まります。
停車して、その景色をカメラに留めたくなるような、青空に映える、もみじの赤。しかし、残念ながら、車道沿いには駐車場がないため、ダム管理棟やもみじ広場の案内板が出てくるまでは、景色を眺めながらドライブするのみです。

もみじ湖の上流にまで登り、山間に流れる河川に景色が変わったころ、ようやく案内板と駐車場が出てきます。「竹の尾広場」です。ここには、観光バスが停められる駐車場や、公衆トイレがあります。この広場では、もみじの紅葉の盛り3週間ほどの間、町の農産物や土産品などの販売がされる店が出て、そこで地元の方との会話を楽しむことができます。

さらに300mほど進むと「景勝地」と言われる「もみじのトンネル」があります。

緩い坂道の両側に植えられたもみじが枝を伸ばして重なり合い、空を遮るトンネル状になっており、見事な美しさです。もみじのトンネルは車で潜り抜けることができますが、ほとんどの観光客は、手前の駐車場に停車し、歩いて、もみじのトンネルを散策します。これはお勧めです。
もみじの夢を抱き、未来ヘ進むことを決心
もみじ湖の美しい紅葉には、ダム建設によりこの地から離れなければならなくなった当時の住民の皆さんの、故郷への思いが詰まっています。

湖底に沈むことが決まった時、この地で苗木屋を営んでいた戸田七郎さんが、もみじ10800本を町へ寄付しました。いつの日か、紅葉が美しく映える地になり、多くの人々が訪ねてくれるようになって欲しい。そうすれば、故郷は何時までも人々の心の中に残り続けるだろう―そんな夢と思いを込めた10,800本でした。  それのもみじを、箕輪町の町民の皆さんが、ダム湖周辺の斜面や広場に植え続け、その後も世話をし続けて、今では紅葉の名所となったのです。箕輪ダムは「もみじ湖」という愛称で呼ばれるようになり、当時の住民の皆さんの思いが本当に形になったのでした。

当時、箕輪ダムの建設事業は、治水や利水の面から、極めて重要な事業とされていました。しかし、ダムの湖底に沈むことになる集落の住民の皆さんは、生まれ育った故郷から去るという辛い思いを味あわなければなりませんでした。

その時の強い決心が、『箕輪ダムの湖底に眠る』という書物の中に、次のように書かれています。

「(ダム建設に)反対ばかりしていてはいけない。上伊那の人々の役に立つ湖水になると胸を張り、我が古里を去って新天地で恥じないように生きていくことが、跡を濁さないということだ」。

この地区に住み、沈む地区のありし姿を後世に残すように書物にまとめた中林孝一さんの文章です。

このようなもみじ湖の景観に秘められた歴史を知ると、その美しさもひときわ鮮やかに感じられるかもしれません。
もみじ湖広場の催事
1992年箕輪ダム完成から30年余りの時を経て、今では、紅葉の季節にイベントが開催されるようになりました。

一つ目は地元の有志委員会が開催する「みのわもみじ湖フェスティバル」。もみじ湖下の大きな広場で開催されています。地元の農産物を軽トラックを店舗にして開店する軽トラ市をはじめ、町内飲食店のフードブースや、酪農体験、広場にステージも設けられ、小学校や有志サークルのステージ発表など、盛りだくさんの内容です。ミニバイクやボルダリング体験などのアクティビティも年々充実して、広場にシートを広げて、お子様から大人まで一日中楽しめます。
二つ目は、「もみじ湖夢ウォーキング」。もみじを眺めながら、もみじ湖一周約8kmをウォーキングするイベントです。ウォーキングブームに乗って、参加申し込みが増え人気のイベントです。
三つ目は、「もみじ湖シアター」。こちらの開催時期は紅葉の季節とは決まっておりませんが、広場を囲む山々が映画の音楽を反響させ、満点の星空の元で行われる映画館、陽が落ち気温が下がった時間に、毛布に包(くる)まって観る、屋外シアターです。

いずれもまだ開催回数は多くないですが、箕輪町やもみじ湖など、箕輪の自然や味覚を楽しめるイベントです。
一年を通して美しい地
2020年イベントの実行委員長だった小河豪さんに、もみじ湖についての想いを伺いました。

「箕輪ダム建設が始まったのは、私が小学校1,2年生の頃でした。夜になっても山の中が工事の灯りで明るい様子を毎日見て育ちました。完成の式典にも出席しましから、底に沈んだ里の切なさよりも、すごいものが建設されたという自慢に似た気持ちでした。大人になり、そこに集落があり歴史の上に成り立ったこの美しい観光地を守りながら、より多くの人にこの地を訪れてほしいと思うようになりました」。

もみじ湖は、街からそれほど離れていないのに、山々に囲まれた静けさがあり、景観を損なう電線もありません。そのくせ、駐車場やトイレは整備されており、街中ではできないアクティビティ(子供用モーターカーや、ドローン)など、全国から人が集まって大会が開催できる条件も整っています。町民が力をあわせて、そういう場所として創り出してきたのです。

「もちろん、紅葉の季節は素晴らしく美しいのですが、ここ、もみじ湖は一年中美しい場所だと思っています。一年を通して多くの人に訪れてほしいですね」。小河さんは、そう話を結びました。もみじ湖にはもみじや新緑などの素晴らしい景観だけでなく、無料で利用できる樽尾沢キャンプ場(申し込み必要)もあります。ダムマニアには嬉しい「ダムカード」の発行もされています(箕輪町役場観光協会・ながたの湯にて)。

高速道路インターチェンジからもほど近く、町のキャッチコピー「ほどほどの田舎」と、喧騒から離れて四季を感じるには、ちょうど良い場所です。ぜひ一度、訪ねてみて下さい。



■もみじ湖
住所 〒399-4602長野県上伊那郡箕輪町大字東箕輪
お問い合わせ 箕輪町観光協会
電話番号 0265-79-3111
アクセス
電車 JR伊那松島駅からよりタクシー15分
車  中央自動車道伊北ICからより15分 駐車場 100台(無料)

■樽尾沢キャンプ場 (みのわダムキャンプ場)
申込先:箕輪町役場 建設課 建設管理係
E-mail:kensetsu@town.minowa.lg.jp
FAX  :0265-79-0230
トイレおよび水道(飲用不可)の設備があります。(12月~4月までの冬期間は凍結防止のため閉鎖)

ちょっと一休み
Long Hills Eco Guesthouse and cafe
TEL: 0265-93-0638
HP:https://www.longhills-nagano.com/

*この記事の情報は、令和3年3月10日現在の情報です。
みんなの体験記ライター
投稿者ともたろう
年代40代
趣味ものづくり、イベント企画
自己紹介伊那谷で生まれ育つ。ほどほどの田舎で、仕事・子育てしてきた経験や想いを、より楽しく暮らす提案として発信していけたらいいなと思っています。
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