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信州の郷土食、「おやき」。 忙しい現代人にこそおすすめの「スローなファストフード」
信州の郷土食、おやき。

おやきは、小麦粉や蕎麦粉などを水で溶いて練り、こねた生地で、野菜やあん、漬物などの具を包んで焼いたもの。「御焼き」から、「おやき」という名前になったと言われています。歴史はかなり古く、縄文時代には原型が存在していたそうです。

そんなおやき、長野県民には親しみのある食べ物で、お菓子として、またちょっとした軽食として、愛され続けています。今回はそんなおやきを実際に作って、お土産として持って帰ることのできる、おやき作り体験をご紹介します。
地域みんなで共創した、川島おやき文化
おやき作りを教えてくれるのは、辰野町川島区にお住まいの小澤さかゑさん。辰野町のかやぶきの館に併設されている交流体験館「よりあい工房」でおやき作りのポイントやおやきの歴史についてのお話を交えて、体験の様子をお伝えします。

ちなみに辰野町川島区にあるかやぶきの館は、日本一大きなかやぶき屋根として知られており、グリーンツーリズム(農村観光)の拠点として、宿泊施設や手打ちそばなどが楽しめる食事処、天然水の大風呂、能舞台まで備えた複合施設です。
立派なかやぶき屋根と豊かな自然景観が旅人を迎えてくれます
―今日はよろしくお願いします。僕もおやきは日頃から朝食やおやつで食べるくらい好きなんですけど、料理が全然できなくて…。こんな感じですが大丈夫ですか…?

さかゑさん:小澤さかゑです。よろしくね。体験自体は1時間くらいでできるし、すごく簡単なので心配しなくて大丈夫。私たちの若い頃はおやきを畑仕事の合間に食べたり、お菓子として食べたりしたね。おやきといっても、北信(長野県北部)だと蒸して作る場合が多いけれど、この辺りの南信だと焼いて食べるほうが多いね」
―かやぶきの館ではどんな種類のおやきを作っているんですか?

さかゑさん:私は、このかやぶきの館で25年間おやきを作り続けているんだけど、昔からずっと蒸した後に焼く製法だね。そうすると、ふっくらした食感になるんだよ。

―25年間もおやきを作り続けているんですね。

さかゑさん:そうだねえ。ここ、かやぶきの館が完成した時からずっと作り続けているから、そのくらいになるね。ここ川島には昔からおやきの文化があったわけじゃなく、1990年代の中頃に、地域のみんなで作り上げたものなんだよね。川島には「川島観光協会」という団体があってね、そこで川島の活性化のために、おやきやおそばを地域で作ろうという話になった。その思いに賛同した地元の面々が集まって、長野市だとか、いろんな地域のおやきの製法を研究したんだよ。その後、かやぶきの館が1997年に完成してから、それまでにみんなで研究したおやきのレシピを使うことになってね。

―川島のみんなで築き上げてきたおやき文化がかやぶきの館に継承されていったんですね。

さかゑさん:そうだねえ。観光の人たちだけではなくて、今でも地元の人が毎日おやきを買いに来てくれて、完売しちゃうこともあるね。

―暮らしの中におやき文化が根付いているんですね。
谷合にある川島の集落。秋になると稲穂やそば畑が黄金色に色づき、美しい紅葉が広がる。かやぶきの館サイトより。
今では珍しい手作りにこだわる理由
さかゑさん:そしたら早速作ってみましょうか。まずは生地作り。かやぶきの館では、中力粉にミックス粉を混ぜたオリジナルの粉を水で溶かしてこねていくよ。
―すごい大きな生地ですね。

さかゑさん:これで2キロくらいになるかな。水を含むとずっしり重くなるからこねるのが大変だけど、体重をかけながらこねていくのがポイント。こねながら手に打粉をつけると、手に生地がくっつかなくなるので、おすすめだね。こうやって上から力をかけてこねていくと…。
さかゑさん:だんだん玉がなくなって滑らかでもちもちした生地になってくるの。

―おー、本当ですね!粉感があってパサパサしていたのが、かなり生地らしくふっくらしてきました。
かやぶきの館マスコットキャラクターのかやぶきんちゃんもおやきづくりに興味津々。
さかゑさん:このくらいになったら今度は生地を摘まんで、おやきのタネを作っていきましょう。

―こんなに伸ばしても切れないんですね。

さかゑさん:生地が滑らかな証拠だね。タネを摘まんだら、手の中でコロコロ転がして、丸く作ってみて。
さかゑさんが手際良く手の中で生地を転がしていくと、みるみる滑らかな丸型に。実際にやってみるとこの難しさを実感します。
さかゑさん:できたら、今度はタネをのし棒で伸ばして、具を包む準備をします。上下左右にのし棒を動かしながら、タネがまあるい形になるようにしてみてね。

―結構難しいですね。いびつな形になっちゃう。

さかゑさん:慣れよ慣れ。25年間も作り続けていればできるようになるね(笑)。長野県の他の地域では、自動で生地からタネを生成する機械もあるみたい。1日に1,000個くらい作れちゃうから効率はいいみたいだけど、私たちは全部手作りでじっくり作っているの。大きさや形も多少違ったりするけど、手作りにしか出せない美味しさがあると思うな。
日本初?赤飯を具にした「紅白お八起」
さかゑさん:できたら、具を生地で包んでみましょう。今回の具は、最近開発した「お赤飯」を使ってみるね。

―お赤飯のおやきなんて初めて聞きました。

さかゑさん:かやぶきの館では、普段は切り干し大根、あんこ、野沢菜などの具が入ったおやきを作っているんだけど、変わり種としていいねっていうことで作ってみたの。縁起もいいから、お祝い事の贈答用にも使ってもらえるようにね。みんなで考えて、「紅白お八起」って名前にしたのよ。「七転び八起き」って諺(ことわざ)があるでしょう。それに因んだ験担ぎだね。転んでも立ち上がれるように、受験とか試合でいい成果が出せるようにって。

―素敵なコンセプトですね。七五三みたいなお祝い事とか、受験とかに食べたくなるかも。

さかゑさん:そしたら、こうやってお赤飯を生地で上から包んで…。
さかゑさん:生地全体を引き伸ばして、お赤飯全体を生地で包んでいきます。ここが結構重要で、手全体を使って少しずつ全体の生地を引き伸ばしていかないと、おやきの「お尻」に生地が余って、食べるときの食感に偏りが出ちゃうの。できるだけ均等な厚さで具を包んでいる状態が理想だね。

―これ、難しいですね。指先だけで生地を伸ばそうとすると、その部分だけ生地が伸びすぎて薄くなっちゃうし。

さかゑさん: 包めたら、今度は蒸し器で蒸していきましょう。大体8分間くらい蒸すとジューシーな食感になっていきます。
肉まんと同じ原理で8分間蒸し器で蒸していきます。
さかゑさん:蒸し終わったら、かやぶきの館の印の焼きをこうやって入れていくよ。
さかゑさん:最後にもうひと仕上げ。プレートの上で少し焼いていこうね。そうすると、中はジューシー、表面はカリッとして、食べ応えが出てくるから。

―すごく香ばしいおやきの香りがしてきましたね。

さかゑさん:はい、上手に焼けました。これで完成です。そしたら、紅白お八起専用の箱に入れてあげるね。
スローフードだけどファストな現代生活に合う、おやき
―おやきの生地のもちもち感と甘さに、赤飯の塩味がうまくマッチしていて、美味しいです。お腹のもちもいいし、お菓子としても、軽食としてもぴったりですね。

さかゑさん:おやきは信州に欠かせない郷土食だけど、ぜひ都会の人にも食べて欲しいね。野菜とか栄養も取れるし、小腹が空いた時にもピッタリだから。

―おやき、僕もよく食べますけど、片手でも手軽に食べられて、忙しい朝の朝食などにも相性がいいなって思います。手間暇かけて作る、スローフードだけど、サクッと食べられる「スローなファストフード」として現代人にもすごく合っているんじゃないかなって。

さかゑさん:ぜひ若い人たちに体験しに来て欲しいなあ。手作りの美味しさや、信州の食文化を体験を通じて感じてもらえたら嬉しいね。

―ありがとうございました!
かやぶきの館
【施設情報】https://kayabukinoyakata.jp/
【予約】https://www.jalan.net/kankou/spt_guide000000166815/activity/l000027490/?ccnt=planList-in&screenId=OUW2210&dateUndecided=1
【所要時間】約1時間
【持ち物】特になし
【金額】1,800円(体験料+おやきのお土産付き)
こやきちゃんパック(小サイズ):5個・600円
おやき(大サイズ):3個・600円
紅白お八起:5個・1000円(贈答用のパッケージ)
紅白お八起:3個・500円(贈答用のパッケージ)

*この記事の情報は、令和3年3月に制作し、令和5年12月に一部内容の見直しをしたものです。
みんなの体験記ライター
投稿者北埜航太
年代20代
趣味カフェ、古民家、歴史ある町めぐり、ジブリ
自己紹介東京の文京区から辰野町に移り住みました。無垢の暮らしが残る、自然体の伊那谷が好きです。そんな伊那谷の雰囲気そのままに飾らない言葉で伝えられるように頑張ります。
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