みんなの体験記
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雅楽、星空鑑賞、森林セラピー。地域と自分を見つめ直す1泊2日の癒し旅
遠くへの観光がしづらい今日。こんな時だからこそ県外や海外ではなく、自分たちが暮らす足下の魅力に目を向ける「地元観光」にいま注目が集まっています。

そんな中、長野伊那谷観光局主催の「上伊那魅力再発見ツアー」が11月13日~14日におこなわれました。テーマは「こころと身体の癒し旅」。10人ほどの伊那谷在住の参加者とともに、長い伝統のある伊那谷雅楽の演奏会や、普段は観光客で溢れる千畳敷の星空鑑賞、森の中で心身ともに癒される森林セラピーなどを体験しました。

本記事では、そのツアーの体験レポートをお届けします。

 
調和のとれた雅楽の音色で心が整う
初日、まず最初にツアーの一行がバスで向かったのは、伊勢神宮ともゆかりのある大宮五十鈴神社(おおみやいすずじんじゃ)。そこで、伊那谷の雅楽の伝統を未来に残すために活動している、伊那雅楽会の皆さんが雅楽の生演奏を披露してくれます。

「雅楽は世界最古のオーケストラとも言われます。西洋のオーケストラのような指揮者はいませんが、演者それぞれが互いの呼吸を感じながら、調和のある音楽を奏でるのが特徴です」

美しい羽織りを身にまとった宮司の花畑樹彦(はなばたたつひこ)さんが初心者にもわかりやすく雅楽の歴史を説明してくれたのち、さっそく生演奏が始まります。初めて聴く雅楽に、最初は圧倒されますが、聴いているうちに龍笛(りゅうてき)や篳篥(しちりき)などそれぞれの細やかな音色が心地よく耳に染み入り、しばし時間を忘れるように聴き入っている自分がいました。

そして、今回のツアーの目玉が星空鑑賞ということで、演奏の後半には、粋なサプライズが。雅楽の演目にはない「星に願いを」を演奏してくれ、参加者のみなさんも聞き馴染みのある音色に感動する中で、会は締め括られました。
普段は神社の宮司をしている伊那雅楽会の皆さん。演奏中は真剣ですが、時折、冗談を言い合うような仲睦まじい雰囲気も
千畳敷カールが星空鑑賞のベストスポットといえる理由
昼食をすませたのち、山岳リゾートとして有名な千畳敷カールへ。標高2,612mまでロープウェイで上り、標高日本一の空に近いホテル「ホテル千畳敷」に到着します。夏に千畳敷カールに登山をしたことはあったのですが、ホテルには泊まれなかったので初宿泊に胸が高まります。

日が落ちて、静寂と暗闇に山が包まれていく夜の8時。いよいよツアーの目玉である、星空ガイドの時間です。案内をしてくれるのは、中央アルプス観光株式会社の小林美友(こばやしみゆ)さん。

「月の光が少ない新月の夜は星空鑑賞にぴったりです。今日はまさに新月なので、きっと綺麗に星空が見えると思います」
星座や天体に関する基礎知識を学んだ上で夜空を見ると、星空鑑賞の楽しみ方が変わります
星座の見方など基礎知識を小林さんから学んだのち、ホテルのドアを開けていよいよ夜の千畳敷へ。氷点下の寒空の中、見たことがない数の満点の星空に、思わず「おお~!」と歓声をもらす参加者の皆さん。じっと眺めていると、自分は山の上ではなく、宇宙の中にいるのではと錯覚するほど、幾万もの星の光が目に飛び込んできます。「星ってこんなに見えるんだ」と、感動を超えた驚きを感じます。晴天、無風、澄んだ空気という三拍子が揃いやすい千畳敷は、まさに星空鑑賞に最適な場所だそう。確かに、普段は決して目にできない天の川や、星がキラキラと揺らぐ様までも、はっきりと目にすることができます。
ずっと見つめていると、吸い込まれてしまいそうな星空(提供:中央アルプス観光株式会社)
「皆さん、F分の一の揺らぎってご存知ですか?焚き火や小川のせせらぎに癒しを感じる方は多いと思うのですが、そうした癒しの効果がある波長のことを言います。実は星の光の瞬きにも同じような癒し効果があるんです」と小林さん。





星空鑑賞は、美しさだけでなく、精神的な癒しの効果もあると知り、ちょっと得した気分に。忙しい日常の中でも、意識して星空に目を凝らしてみたいと感じました。

今回のような星空鑑賞の他にも、定期的に企画イベントを開催しており、最近では星空と地酒の日本酒を楽しむちょっと変わった星空鑑賞の体験も。
地元酒蔵の宮島酒店と中央アルプス観光株式会社が、千畳敷の雪解け水で作ったご当地日本酒の「辿-Sen-」
ちなみに、ホテル千畳敷は星空だけでなく、朝日も絶景。天気が良ければ、ダイヤモンド富士ならぬ、「ダイヤモンド南アルプス」が望めるかも。富士山の山頂も少しだけ見ることができます。
ホテル千畳敷の展望カフェからの朝日。早起きしても見る価値がありました。
森林散策はまるで天然アロマのシャワー
ぐっすりと眠れた翌日は、大芝高原の森林セラピーへ。森林セラピーとは、森林の中を歩いたり、自然に触れることで心身の癒しを得る体験。「森林浴」と異なり、きちんと科学的に効果が立証されたものです。セラピーのガイド資格を持ち、大芝高原の森に精通した源平靖佳(げんぺいしずか)さんに案内してもらいます。簡単に準備体操をしたのち、さっそく紅葉が美しい森の中へ。
目的に応じたさまざまなコースが。ウッドチップが引かれ、ちょっとした散歩にも最適です。
森の中に入って早速、変化があったのは呼吸の深さ。最近マスクをするようになり、浅い呼吸になっていることが多かったのですが、森の中で散歩をしていると、深呼吸するだけで気持ちがよく、自然と深い呼吸をするように。

「深呼吸すると、副交感神経が活発になり、心身がリラックスするんです」と源平さん。

さらに木々が分泌するフィトンチットという成分には、抗癌作用や癒しの効果があり、天然のアロマとも呼ばれるほどだそう。森の中を歩くということは、天然のアロマをシャワーのように浴びているのに近いのかもしれません。
木を見ていると不思議と癒されて力が湧いてきます。
また、木々が風で揺れる時の「サーッ」という葉音や、木々が揺らめく光景にも、星空と同様にF分の一揺らぎに近い癒し効果があるんだとか。

「森に入ると、鈍っていた五感が蘇って、乱れた感覚を整えてくれる力があるんです。そういう森の気持ちよさに気づいて、ガイドをはじめました」
元南箕輪村地域おこし協力隊として、大芝高原のセラピーロードを盛り上げている源平さん
森と人をつなぐ案内人ともいうべき、源平さんのような森林セラピーガイドがいることで、一人では気付けない森が持つ効能や価値に目を向けることができ、散策がより一層楽しくなります。



途中、落ち葉の多いエリアでは、寝転がって休憩する時間も。実際に落ち葉の上で寝転んでみると、ほのかに暖かく、柔らかい感触に本当に寝てしまいそうになります。

「近所に住んでいるけれど森の中で眠ったのは初めて。森がこんなに気持ち良いなんて知らなかったから、また来たいね」と、嬉しそうに話す参加者の方もいらっしゃいました。
落ち葉の上に寝転ぶ参加者。中には気持ち良すぎて本当に眠ってしまう方も。
自分を見つめ直す旅、伊那谷で
人と長い歴史が奏でる雅楽の音色、山頂の上で見る満点の星空、そして身も心も優しく包み込んでくれる森。さまざま癒し体験を通じて感じたのは、癒しとは、自分自身の感覚・感性を取り戻し、偏りのあるアンバランスな自分から、ニュートラルな状態に戻っていくことだということ。

遠くの国の絶景もいいけれど、身近な地域の何気ない風景に、自分を取り戻す癒しを得る。そんな風に自分の内面を整えていくことこそ、旅の本当の価値ではないかと思いました。

身近な地域の魅力や自分の足下を見つめ直す旅、あなたもしてみませんか?
雅楽体験 
https://www.inadanikankou.jp/activity/page=id939

冬の星空2612体験 | 中央アルプス 駒ヶ岳ロープウェイ
https://www.chuo-alps.com/2612-winter/

信州大芝高原 みんなの森 - 道の駅大芝高原(森林セラピー)
https://oshiba-michinoeki.net/minnanomori/

*この記事の情報は、令和2年11月30日現在の情報です。
みんなの体験記ライター
投稿者北埜航太
年代20代
趣味カフェ、古民家、歴史ある町めぐり、ジブリ
自己紹介東京の文京区から辰野町に移り住みました。無垢の暮らしが残る、自然体の伊那谷が好きです。そんな伊那谷の雰囲気そのままに飾らない言葉で伝えられるように頑張ります。
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