地元産の良質なそば粉100%でつくる、本格そば打ち体験
みはらしファーム
おいしいそばの条件とされる「三たて(挽きたて、打ちたて、茹でたて)」。
そんなおいしい手打ちそばを自分で打つことができる施設が、長野県伊那市にあります。
伊那インターから車で5分。年間を通してさまざまな農業・食体験ができる「はびろ農業公園 みはらしファーム」では、地元産の良質なそば粉100%でつくる、本格的なそば打ちを手軽に体験することができます。
今回は、小学生の息子と一緒にそば打ちに初挑戦。伊那谷の食文化や、日頃食べているそばがどんな風に作られているか体験しながら一緒に学んでいきたいと思います。
手ぶらでOK。予約必須の体験道場
そば打ちは、そば処「名人亭」に隣接する体験道場で体験できます。
体験スペースには限りがあるので、前日12:00までに(30人以上は3日前までに)予約が必要とのこと。包丁を使う作業もあるので、小学生以上から体験を受け付けているそうです。
材料や道具はもちろんエプロンも貸してもらえるので、手ぶらで気軽に出かけられるのも魅力。
今回そば打ちを教えてくれるのは安藤名人。
「おそばが一番美味しいのは、挽きたて、打ちたて、茹でたて。これが一番おいしいと言われています。今日は、この3拍子が揃っていますので、一番おいしく召し上がっていただけると思います」と、名人の言葉に期待が高まります。
さっそく体験スタートです。
そばを美味しく打つ10工程
1、水回し
振るったそば粉に水を2~3回に分けて加え、粉一粒一粒に水が行き渡るように攪拌します。その日の陽気・粉の渇き具合・室温・打つ人の体温などによって絶妙な見極めが要される水加減も、「ここの線まで入れましょう」「最後は2、3滴残すようなイメージで」と名人が細かく指導してくれるので安心です。
この水回しがうまくいってないといざ食べる時に、そばが短く切れてお箸で持てないような状態になってしまう、なんてこともあるそうです。丁寧に、丁寧に。
2、練り
続いて練りの作業。向きを変えながら生地を巻き込むように100回ほど練っていきます。そぼろ状態だった生地がまとまり、粘りも出てきます。
3、くくり
菊練りで粘りを出してひとまとめにし、丸く形を整えます。
菊練りには、生地の中の水分と空気を追い出してそば粉と水をひと続きの状態にする効果があるそうです。 立てて、こねる。立てて、こねる……。初めての作業で手つきはおぼつきませんが、「綺麗綺麗!おへそが曲がらないし上手!」と名人に褒められて息子も嬉しそう。
4、へそ出し
鉢のカーブを上手に使って、生地の空気を抜きながら円錐状に形を整えます。「手はチューリップのように。傷はお手当してください」。つるっと可愛い形になりました。
5、手のし
天板に打ち粉を少し。円錐状になった生地を上から少しずつのして平らにしていきます。手形がつかないよう優しくゆっくり。直径23センチほどの均一の厚さの円になるように、手でのしていきます。
「こんなに厳密にしなくても……と思うんですけど、一つずつの工程がきちんとできていれば、次の工程にうつった時にもきちんとできやすいんです」と安藤名人。
6、丸出し
ここからは、のし棒を使い生地を回転させながらさらに大きな円に伸ばしていきます。「回転の角度は45度や60度でとよく言われますが、自分のおへそを基準にするとわかりやすいです」と、初心者や子供でもわかりやすい説明が嬉しいです。前工程でせっかく綺麗にできた円を壊さないように慎重に伸ばしていきます。
7、四つ出し
丸く伸ばした生地を、今度は四角にしていく作業。のし棒に生地を巻きつけ、パタパタと転がすと先ほどまで円状だった生地に角ができ四角い形になってきました。より四角くすることで、無駄なく均等長さの麺に切り揃えやすいのだそう。
8、木のし
「厚いところを薄くしていく、そうすると伸びていきます。力任せでやると粉にストレスがかかるので、少しずつですよ」。この時、生地を傷付けないよう手は猫の手に。名人も初めは穴が空いたり、生地の形が歪んでしまったりしたのだとか。失敗談を交えながら、時に手を貸してくれ、1.5ミリほどの厚さに伸ばしていきます。
9、たたみ
のした生地の間にしっかりと打ち粉をふって半分にたたみます。生地はめん棒に載せて動かすと失敗がないそうです。さらに打ち粉をふって三つ折りに。
10、切る
いよいよそばを切ります。包丁を内側に倒して麺の太さにこま板をずらし、こま板にそってまっすぐ包丁をおろします。そば包丁のずしっとした慣れない重さに息子も真剣な表情。均等な幅に切るのは大人でも難しく、名人のすごさを実感します。
普段食べているそばも、こうした熟練の技術に支えられているんだなと感じます。
そば本来の風味を楽しむ「水そば」
切ったそばはたっぷりのお湯で茹で上げ、冷水でよく洗いしめます。
「茹でたてを何もつけずに味見してみて。『水そば』といってこれが一番おいしいんですよ」。そばを一本試食してみると、「!?おいしい~!」そば本来の風味がすごく良くわかります。
実食
できあがったそばを、用意して頂いたつゆと薬味でいただきます。料金を追加すれば、天ぷら・五平餅・デザートなどがついたお食事セットにもできるそうです。普段から信州でおいしいそばは食べ慣れていますが、自分で打ったできたてのそばの味は格別。不揃いな麺を見て、「ここは僕が切ったところ、これはお母さんが切ったところだね」となんだか楽しそうな息子。そんな風に過ごす食事の時間も手打ちそば体験の醍醐味ですね。
栽培から食卓まで。文化と技術を継承する「信州伊那そば打ち名人の会」
体験道場で、そば打ち体験を手助けしてくれるのは、そば打ち名人約50名で構成される「信州伊那そば打ち名人の会」の方々。会の活動を経て自分のお店を持つ方もいるほど、本格的なそば打ちの技術を伝えています。
会員のほとんどが地元の方で、中にはこの地区でそばを栽培する生産者さんもいるのだとか。収穫されたソバの実は、このそば打ち体験にも使われるのだそうです。
地元で採れたそばをその地で食す。みはらしファームでは、体験を通じてそば打ちの技術を地域に広め継承しながら、郷土の文化を県内外の方に伝えています。
みどころいっぱい。みはらしファーム
そば打ち体験の他にも、みはらしファームには「やってみらっし」という30種類もの手作り体験ができる施設や、季節の野菜や果物をその場で採れる収穫体験があります。園内には公園や温泉施設、食事処もあり一日中満喫できます。地元の農産物や特産品が揃う「とれたて市場」でお土産も買えます。年間を通して様々な催しを企画していますので、ぜひ体験を予約して訪れてみては?
まとめ
・体験は手ぶらでOK。事前予約が必要、電話で気軽に申し込める。
・地元産そば粉100%でつくる手打ちそば。各工程を丁寧にきちんと行うことが出来上がりのおいしさを決める。
・伊那谷の蕎麦文化は信州伊那そば打ち名人の会」によって多くの人に伝えられている。
・みはらしファームでは、四季折々さまざまな体験ができる。
【予約】みはらしファーム公園事務所 0265-74-1807
【所要時間】10時~・13時~ 1体験120分(食事時間含む・変動あり)
【料金】1人の場合 5,200円/1人・2人の場合 2,650円/1人・3人の場合 1,800円/1人・4人以上の場合 1,350円/1人・※1打ちは5人前。6人以上のグループは要相談。
*この記事は、令和元年12月に公開し、令和5年8月に一部更新をしたものです。