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    1.小口良平さん(grav bicycle station)
伊那谷、あの人の絶景。
1.小口良平さん(grav bicycle station)
コンプレックスから飛び出した地元。 帰ってきたら、世界に誇れる絶景に気付いた。
自転車で登頂した、冬の大城山にて(写真提供=小口良平さん)
 伊那谷にもほど近い、長野県岡谷市で生まれ育った小口良平さん。「自転車冒険家」として2007年に日本一周、その後2009年から2016年までの7年半をかけて世界一周を達成した小口さんの最初の「冒険」は、幼少期に遡るのだと話します。

 「8歳のとき、3歳年上の兄と二人、自転車で地元の諏訪湖を一周したんです。湖の近くに親戚も暮らしていたけれど、一周をしたのはそのときがはじめて。道に迷ったり、暗くなったりして不安でベソかいていたんですが(笑)、それでも一周できた達成感は、気付かないうちに自分のなかの一つの指針になっていたんです」

生まれ育った岡谷からほど近い、辰野町に移住してきたのは2016年。世界一周を終えてたどり着いた辰野の景色は、見慣れていたはずの伊那谷でも見え方がまったく違っていることに気付かされたのだとか。

 「僕の幼少期、諏訪湖の別名といえば『日本で最も汚れた湖』。その評価が子ども心に傷ついて、生まれ育った場所のことを誇らしく思うことができなかったんです。世界一周の旅に出たのも、自分のなかに何か一つでも、誇れるものを持ちたかったからだと思います。

 けれど世界一周の旅を終えて、この伊那谷に暮らしてみたら、世界中の人たちに自慢して見せたい場所がたくさんあることに気づくことができた。だから僕は、世界の観光地がそうであるように、ここ日本でも『自転車ツアーガイド』をちゃんと生計を立てられて、子どもに憧れられるような仕事に育てたいんです」

 まだまだ知られていないからこそ、伊那谷には素朴で感動的な絶景ツアーの「のびしろ」がたくさんある、と小口さん。「この特別な地形と豊かな自然が生み出した絶景や文化は、世界中の人に喜んでもらえると確信しています」
小口さんがすすめる「私の絶景」
1.キリマンジャロの“ツウな旅人のための絶景”を思い出す「大城山」
「辰野町に越してきてすぐに出会った絶景スポットですが、今でも、いつ訪ねても感動します。車でも、道を知っていればある程度の場所まで上がれるし、Eバイクならここ『グラバイステーション』から約1時間で頂上に到着できるアクセスの良さも魅力です。

麓の田んぼに水が入る初夏や紅葉の秋、雪景色もまた絶品。にもかかわらず、地域の方をお連れしても、『こんなところあったっけ?』と言われるような穴場で、ガイドと向かう旅がぴったり。そんなスペシャル感がアフリカ最高峰の山・キリマンジャロを思い起こさせる絶景です」

大城山
http://kankou.town.tatsuno.nagano.jp/oojyouyama.html
2.素朴で豊かなグアテマラのヒッピータウンにイメージが重なる「川島エリア」
「辰野町の西部、山懐に抱かれた隠れ里のような趣の『川島エリア』。三州街道から分かれる細道を奥へ進めば進むほど、どこか異界の地へ迷い込んだような不思議な感覚を味わうことができる地域です。

 一面に広がる田んぼやそば畑の農村風景から、神秘を感じる横川の蛇石、たくさんの神社に茅葺屋根の古民家まで。表情に飛んだ“日本の原風景”がぎゅっと詰まったこのエリアは、和のカルチャーに関心を抱いてやってきたインバウンドの旅行者に大好評。個人的にも『近くのおすすめ』を聞かれたときによくお伝えしている場所なんです。

 一見、目立たない場所にあるけれど、好きな人は不思議と引き寄せられて、その人がまた、類友を呼び、コミュニティができてくる。そんな感覚が、グアテマラで出逢った「サンマルコス」というヒッピータウンの“ゆるやかな熱”を思い出させてくれる大好きな場所ですね。

川島地区辰野サイクリングマップhttps://www.zeropointjapancycling.com/mukasibanasiroute
3.ニュージーランド・クイーンズタウンのツチボタルにも負けない!「信州辰野ほたる祭り」
「辰野を代表する夏の風物詩である“信州辰野ほたる祭り”。地元ではあまりに身近すぎて、足を運んでいない方がいたら、もったいない! 一度と言わず毎年の恒例にして訪ねてほしいくらい、迫力が味わえます。

 僕のなかで、ここに来る前の“マイベスト蛍”の体験は、ニュージーランドの南、クイーンズタウンの近くの町で出逢った『ツチボタル』。洞窟の暗闇の中、満点の星空のように青白く光るホタルが見られるんです。その経験と同じくらい、辰野のホタルは迫力があります。

 真っ暗な空間のなか、ただよっている無数の光に包まれると、宇宙空間に迷い込んでしまったのでは?と思うほどの浮遊感。ぜひ、多くの方に体験していただきたい、伊那谷が誇る絶景だと思います」

信州辰野ほたる祭り
https://www.inadanikankou.jp/special/page/id=1342
photo:Masaru Furuya
小口 良平(おぐち・りょうへい)
自転車冒険家。長野県岡谷市生まれ。大学卒業後、2007年から約1年をかけ自転車で日本一周を達成。2016年には世界一周の自転車旅を成功させた。帰国後、長野県辰野町に移住。現在はgrav bicycle station代表として、自転車やEバイクを使った観光ツアー造成やサイクルマッププロデュース、自転車まちづくりガイド養成スクール運営などを手がけ、地域の観光ポテンシャルの掘り起こしとともにその魅力を世界に発信し続けている。

https://gravbicycle.com/