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農業体験①南アの棚田で米の自然栽培に挑戦
「農ある暮らし学び塾」とは?
有機無農・自然栽培に関心を持つ「大人」が集まった初夏の農作業体験会
伊那谷には農・林業の仕事を体験できる様々な取り組みがあります。今回紹介する「南アルプス・農ある暮らし学び塾」は、2019年度からスタートした「有機・自然栽培」に焦点を当てた取り組みで、首都圏在住の人に向けた東京での農業講義を年間に5回開催し、参加者が年2回、農業を体験するために伊那市長谷地区を訪れています。この他にも、野菜づくりや郷土食に焦点を当てたオプションツアー等も季節毎に企画されています。自然豊かな伊那市で、「農業とともにある暮らし」を感じてもらい、心身ともに癒していただくと同時に、移住や就農等を考えてもらえたらいいなぁ……主催者はそんなことを期待しているようです。さぁ、伊那谷で農業体験に挑戦! 五感で豊かな山間地の暮らしを感じてみてください。
化学農薬不使用の田んぼには草が生える
田植え後1か月くらいで行った「田の草取り」
2019年初夏の農業体験には首都圏から19人の方々が伊那市長谷の山間にある棚田に集まりました。体験研修の受け入れ先は、海外の消費者をターゲットにして、化学農薬や化学肥料を一切使わずに自然栽培米を生産し、輸出・販売を行っている農業生産法人Wakka Agriさん。化学肥料だけでなく、家畜などの糞尿を利用した堆肥も使わない、「自然栽培」という手法で米を栽培しています。長谷地区は天竜川の支流である三峰川の上流にあり、南アルプスを源にした清涼な水が出る土地。この田んぼから上流には、家屋や誰かが耕作している土地がないため、きれいなままの水が使用でき、「自然栽培」にはうってつけなのです。

でも、化学農薬を一切使わないため、普通ならば除草剤を撒いて押さえている雑草が、この田んぼでは目一杯、元気に成長してきます。それを人力で取り除くのが「田の草取り」。「田車」と呼ばれる昔ながらの道具を使ったり、文字通り自分の手で草を取ったり、大の大人が日がな一日、除草作業に汗を流しました。
地域の食文化「おやき」の「おこびる」を味わう
「おやき」を差し入れてくれた地域の住民の方
「水が温かくて気持ちいい!」とか「お~!おたまじゃくしがいる!」などと歓声を上げて喜んでいた都会の皆さん。作業中盤には、この棚田がある伊那市長谷の中尾地区の住民の方が手作りした郷土食、「おやき」を差し入れてくれました。
「おやき」は小麦粉(米粉の場合もあり)を練った皮に、油炒めにした野沢菜漬けや、ナスのみそ炒め、ヒジキやおからなどの具を包んで焼いた信州特産の食べ物。今回作ってくれた加藤双葉さんの「おやき」は、油を敷いた鉄板の上できつね色になるまでこんがり焼いた物でした。(その他、囲炉裏などで焼いたものや、せいろを使って蒸かしたものなどもあります)。参加者は田んぼの畔に腰を下ろして頬張り、「おいしい」「もう2個も食べた!」などと和やかな雰囲気で語り合いました。昔からこのような農作業の途中、小腹が空いたところで食べるおやつのような食べ物を、この地方では「おこびる」などと呼んできました。加藤さんにそんな説明を受けながら、農業を体験し、郷土食の味わい、地域住民の優しさを知る、そんな「農ある暮らし」体験する現地研修でした。
寄せられた様々な感想
秋には畑で芋堀りも
参加した皆さんに感想を聞きました。「手で草取りをしてみると手足がとても疲れました。除草剤を使わずに、これだけの田んぼを管理していることに驚いています」と東京都Aさん。また「普段パソコンの前で何時間も書類を直しているので、ストレスが溜まります。農作業は体を動かしながら、無心になれるので、ストレスの発散になります」という神奈川県のBさん。「家庭菜園をする中で、自然が好きだと気づきました。自然豊かな田舎でゆっくり生活しながら、農業をしてみたいです」と、移住の希望を述べてくれた千葉県のCさん。埼玉県から参加したDさんは「子供たちには、都会と地方の両方で住んでほしいです。子供たちが両方(の生活)を知り、いろんな経験をしてほしいから移住したいです」と話してくれました。
一方で、「病気や事故を起こした時に、病院が近くにないので、都市部から離れた場所に住むのは不安です」とか、「いきなり地方に住む勇気がない」「農業で収入を得るのは難しそう」などと、農業にあこがれを抱きながらも、移住するには不安もあると率直に話してくれた人も多くありました。過疎化・後継者不足に悩む田舎の人と、農業にはあこがれるけれど実際に移住して就農するのはちょっと大変と思う都会の人が本音で語り合うことも重要なこと。農業体験ではそういう貴重な出会いも生まれます。
伊那谷の農業・林業・暮らしの体験メニューはますます広がりそう
秋には稲刈りも体験しました
今回は伊那市長谷でスタートした「農ある暮らし学び塾」の農業体験の一コマを紹介しましたが、伊那谷では現在、こうした「農ある暮らし」を体験するメニューが次々と生まれようとしています。農家に泊まって農業体験・暮らし体験を楽しむ「農家民泊」や、森林について学び、森づくりに実際に関わってみる林業体験・森林体験もスタートします。お一人で、また家族・ご友人とご一緒に、さらに気の合った仲間や会社のグループなどでまとまって……様々なメニューが生まれつつありますので、関心のある方は、長野伊那谷観光局までお問い合わせください。

(文・写真:産直新聞社)
■「農ある暮らし学び塾」
お問い合わせ:南アルプス山麓地域振興プロジェクト事務局 TEL 0265-82-1260
■農家民泊やその他の農業体験プロジェクト
お問い合わせ:長野伊那谷観光局