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料理人たちを虜にするプリプリの無添加サーモン。 「いぶきサーモン」の産地を訪ねて
中央アルプスの主峰、木曽駒ヶ岳の麓に位置する「いぶき養鱒場(ようそんじょう)」(長野県宮田村)。ここでは、都内の名店の料理人をも虜にする上質な川魚が育てられています。その種類は、宮田村のふるさと納税の返礼品にも選ばれているサーモンをはじめ、イワナ、コイ、アユなどさまざま。たしかな味わいは、どのように生み出されているのか、その秘密を紐解きます。
いぶき養鱒場へは、駒ヶ根ICから車で約5分。場内には縦長のいけすが並び、種類や生育段階ごとに分けて魚が育てられている。
アルプスの冷涼な黒川で育てる、国内有数の大規模養鱒場
冬の間、中央アルプスの山頂付近は雪に覆われる。いぶき養鱒場では、この山々の雪解け水を由来とする一級河川である黒川の水を引いている。
「雑味やくさみが一切なくコクがあり、身も卵も引き締まった食感を楽しめる」と評判の、いぶき養鱒場の川魚たち。そのおいしさの大きな背景には、アルプスの清らかな水の恵みがあります 。

 いぶき養鱒場は、中央アルプスから流れ出る一級河川「黒川」の水を引いています。水量が豊富にあり、かけ流しの状態でいけすに水を供給し続けることが可能。
味の決め手となるもうひとつのポイントは、水温の冷たさ。年間を通じて水温が一定である湧水とは対象的に、アルプスの沢水は季節ごとに水温が変化します。いぶき養鱒場に流れこむ黒川の沢水も、0度から18度と温度に大きな幅があり、魚にとっては非常に厳しい環境。とくに水温が5度を下回る冬期はエサを消化せず、食べる量を減らすので生長が止まってしまいます。

刺身用サイズのサーモン(重量3㎏)の場合、一般的な湧水の養鱒場では約3年で育つのに対し、いぶき養鱒場では、なんと8年もの時間が必要になるとか。ここでは、8度以上の期間が1年のうち3~4ヶ月しかないのです。

黒川の豊富な水を引いた広く大きな池で育ち運動量が多いため、余計な脂がそぎ落とされて引き締まった魚体のおいしさが味わえるのです。
8年もの長い年月をかけて約80センチもの大きさに育つ
伊那市「kurabe CONTINENTAL DELICATESSEN」のコース料理の一品、いぶきサーモンのミ・キュイ。サーモンのなめらかな食感を損なわないよう、絶妙な火加減で仕上げられている。
味に加えて特筆すべきは、いぶき養鱒場では添加物や抗生物質を使用していないということ。そもそも大量生産を目的としていないことも理由のひとつですが、黒川の豊富な水を引き込んだ広く大きな池で育ち、健康優良であるために薬物類を使用する必要がないということが、大きな理由。つまり、味わい深く無添加ないぶき養鱒場の魚は、アルプスの過酷な生育環境を逆手に取ったからこそ生み出された、伊那谷の恵みといえるでしょう。
開業直後に大ピンチ! 生き残った3匹からのリスタート
代表の植松峰巳雄さん。山梨県にあるニジマス専門の養殖場で6年間修業し、独立、ヤマメ専門の養殖場を12年間経営の後、宮田村へ移住しいぶき養鱒場を立ち上げた。
川魚の生育に最適な場所を求めていくつもの地域を見て回り、伊那谷(宮田村)の水が決め手となって開業したのは2013年。代表の植松峰巳雄さんに話を伺うと、立ち上げの当初から、この環境ならではの苦労があったそうです。

開業初年度は、黒川の上流にある40トンもの巨岩であるひげすり岩が風化で崩落して水流をせき止め、いけすで飼っていた93%もの魚が酸欠で死んでしまうという大ピンチ! 廃棄した魚は25tにも及びました。産卵可能なメスはたった3匹。そのわずか3匹に受精と孵化をさせることによって再生を図り、なんとか息を吹き返したそうです。この経験が、”いぶき”養鱒場の名前の由来となりました。
ひげすり岩の崩落により死んでしまった魚は25tにも及んだ(2011年10月22日撮影)
「この場所で養鱒場をするなら、魚を大量に飼うべきではないということを痛感しましたね。以来、養殖効率を求めない、今のやり方で経営を続けてきました」(植松さん)
出荷を間近に控えるいぶきサーモン。このサイズに育つまで、長い年月と多くの手間がかかっている。
 大ピンチを乗り越え、10年にわたり営業を続けてきたいぶき養鱒場ですが、魚を育てるうえでの困難は尽きません。大雨が降れば、土砂がいけすに入ってしまうので重機を使って撤去しなければならない。水温が氷点下を下回れば、水が凍って稚魚が死んでしまう。山に囲まれた環境なので、鳥や熊などに魚を食べられてしまうことも……。 

そうしたリスクに晒されながら生き抜いてきた魚だと思うと、いただく際の感慨もよりいっそう深まります。
稚魚が鳥類に食べられないよう、いけすの上にネットが張られている。
夜中、赤外線カメラで捉えられた熊の様子。山がすぐそばにあるため、こればかりは防ぎようがない。
超人気商品「暴れイクラ」は、なぜこんなにもプリプリなのか
いぶきサーモンのイクラは、お箸で掴めないほど、卵膜に厚みと弾力がある。
採卵の風景
いぶき養鱒場の看板商品は、ふるさと納税の返礼品にも選ばれているサーモンと鱒イクラのふたつ。とくにイチオシは、くさみがなくコクがあり、噛むと「コリっ」と弾ける音が聞こえるほどの驚きの食感を楽しめる「暴れイクラ」。ふるさと納税の紹介ページ(https://www.miyafull.jp/catalog/show/68)で「転がりやすいのでご注意ください」と注意喚起されているように、スプーンなしでは食べられないほど卵膜に張りがあり、噛んだ後には卵膜が口のなかに残らないという、独特な食感が特徴です。

多くの人にとって馴染みのあるサケのイクラは、筋子の状態で取り出されているため卵膜が 薄いのが一般的です。さらに、網を使って一粒ごとにバラす過程で潰れたりするため生臭さが発生してしまいます。

一方、いぶき養鱒場のサーモンのイクラは、そもそも受精を目的に育てられているため、卵を体内で成熟させたタイミングに絞り出されたもの。すでに一粒ごとにバラバラな状態なのでくさみが少なく、弾ける食感が楽しめます。

 いぶき養鱒場に隣接する宿泊施設「息吹館」に宿泊すれば、夕食時などにこの暴れイクラを堪能することができます。息吹館ではランチ営業もやっていて、事前予約は必要ですが、「絶品サーモンの親子丼」を注文することでこのイクラをいただくことも可能。さらにイクラの単品も購入できるのも、うれしいところです。
絶品サーモンの親子丼には、サラダ、あら汁、お新香、食後のコーヒーが付く。
息吹館は、宴会スポットとしても地元の人々に密かな人気を誇っています。豪華な魚料理をお酒と一緒に楽しめるだけでなく、近隣市町村であれば送迎ありという手厚いサービスも……!

 新鮮な川魚を堪能しに、ご家族や仲間を誘って足を運んでみてはいかがでしょうか。
息吹館には、11畳~14畳の広さの客室が5部屋ある。
息吹館は、いぶき養鱒場から「こまゆきロード」を挟んで反対側に立地。
いぶきサーモンを提供している飲食店・宿泊施設
日曜の限定営業で、いぶきサーモンを使った数多くのメニューを提供している飲食店「ここまるキッチン」の「いぶきサーモンのムニエル」。
また、いぶき養鱒場で育てられた魚は、伊那谷や都内の飲食店・旅館でも味わうことができます。プロの料理人たちそれぞれが生み出す味わいも、ぜひお楽しみください。



いぶき養鱒場
山荘息吹館
TEL/FAX:0265-98-6510
・IL PUNTO del bosco(駒ヶ根市) https://www.facebook.com/IlPuntoDelBosco

・かっぱ厨亭(駒ヶ根市) https://www.facebook.com/komaganekappa

・ここまるキッチン(駒ヶ根市) https://www.facebook.com/kokomarukitchen

・kurabe CONTINENTAL DELICATESSEN(伊那市)

https://www.facebook.com/kurabeCONTINENTALDELICATESSEN

・ビストロなかしょく 中央商店街食堂(伊那市)

https://www.facebook.com/bistronakasyoku/



・e café(箕輪町) https://www.instagram.com/e_cafe_information/?hl=ja

・Fiocchi(東京都世田谷区) https://www.fiocchi-web.com/

・ボンコパン(駒ヶ根市)https://boncopain.net/

・ロニョッコ(埼玉県朝霞市)https://www.instagram.com/lognocco.asaca/



≪宿泊施設≫

・駒ヶ根高原リゾートリンクス(駒ヶ根市) https://www.komagane-linx.co.jp/

・駒ヶ根高原リトリート すずらん颯(駒ヶ根市https://www.suzuranso.com/

・季澄香(駒ヶ根市) https://www.tokisumika.com/

・和みの湯宿 なかやま(駒ヶ根市) https://yuyado-nakayama.com/

・竹松旅館(高遠)http://www.takematsu-matsutake.com/

・かやぶきの館(辰野町)https://kayabukinoyakata.jp/

・ゼナギ(南木曾)ゼンリゾートhttps://www.zen-resorts.co.jp/
*取扱い店舗・宿泊施設は変更になることがありますので、詳細は、各施設へのご確認をお願いいたします。