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伊那市菓子庵石川 ~伊那谷銘菓ちいずくっきい誕生ものがたり~
 ふわりさくり。“ほろほろ”とこぼれるやさしい「ちいずくっきい」

 中には少し塩味を感じる「ちいずクリーム」。笑みがあふれ、次のひとくちに向かう。細かくなったくっきいを集めて最後の最後までおいしい。
 伊那谷銘菓「ちいずくっきい」は、1960年代2代目社長の時代に販売された、「菓子庵石川」の代表銘菓。

 時代に合わせながら変化し、なおも大切に継承されてきた「ちいずくっきい」について、菓子庵石川4代目社長・石川信頼さんと歴史を遡りながら、魅力もほろほろと、紐解きます。
お客様にも、作り手にも“地域の一番店”に
 2020年菓子庵石川は創業100周年を迎えました。

「創業は曽祖父にあたる石川律治さんです。その時代のお客様や支えてくれた人がいて、今の時代、今の石川があるんです。」

 創業は1920年、小売店へ卸売りを行う菓子製造業として石川は始まりました。1922年には、伊那市中央区から現在の伊那市通り町商店街裏側へ移転。1960年ごろまで、販売していた商品は「まんじゅう」が主流でした。

 しかし、まんじゅうは食べられる期日が短く「日持ちするお菓子は」と考え、当時珍しかったチーズとクッキーを合わせて誕生したのが「チーズクッキー」でした。味も日持ちよかったことがお客様に喜ばれ、さらにはこのころから“お菓子屋さんの修行といえば「石川」“と言われるほど菓子職人の育成にも注力。お客様にとっても作り手にとっても、“地域の一番店”となっていったのです。
チーズクッキーから「ちいずくっきい」、そして・・・
 カタカナ表記だった「チーズクッキー」から、ひらがな「ちいずくっきい」へ変わったのは、1980年代。この表記には、「ちいずくっきい」の最大の特徴である「ほろほろとくずれるやさしい食感」が文字からも伝わるように、また小さなお子さんも読むことができるようにとの意味も込められています。そして「ちいずくっきい」は老若男女問わず愛されるお菓子として、現代へと受け継がれていきます。初期のころ「チーズクッキー」はチーズそのものを使用していたこともあり、昔は“しょっぱかった”や“酸っぱかった”との声も届いていたそう。現在「ちいずくっきい」ではバタークリームの中にチーズを入れてあり、発売から60年以上も経過した今では“チーズが苦手”だという方からも“ちいずくっきいなら食べられる”とうれしい声があります。

 「私は常温で、ホットミルクとの組み合わせが一番好きなんです」(石川社長)

 そして、2018年には「ちいずぷっちい」が誕生。

「ぷっちいと響きもかわいいので、自分への贈り物としても楽しんでもらいたい」

 そんな思いから生まれた“ぷっちい”は、“がんばったご褒美”や“ちょっとしたプレゼント”として選ばれることが多く、今ではすっかりもう一つの人気商品です。
一番のこだわりと、たいせつな“もうひと手間”
 「季節によって気温の違いがあり、材料の水分量や配合などいまでも研究しながら作っています」と、石川社長。

ちいずくっきい独特の食感“ほろほろ”は、一般的なクッキーとブッセの間に入るような口当たり。たいていクッキーを作るとき、生地は空気を含まないように作りますが、「ちいずくっきい」はこの“ほろほろ”を生み出すため“空気を含むように作る”のがちいずくっきい一番のこだわりだと話します。

 かつてはこの、生地を混ぜる工程がはとくに重労働だったそう。

「すくって混ぜる、すくってはまた生地を混ぜる。この作業は男性でないとできないものだった」という作業も現在では機械が導入され、作業負担の軽減とともに “ほろほろ”食感を安定的に生み出せるようになりました。

 それでもすべて機械が行っているわけでなく、最後に職人さんの手が入り、もうひと手間を大切にし“ほろほろ”が生まれるのです。表面が“さくっ”となるようにオーブンの設定も、その日の生地の状態を見ながら焼き上げます。
職人の技が光る、繊細な工程も
 焼き上がった「ちいずくっきい」の中身はバタークリーム風の「ちいずクリーム」。

 このクリームをサンドする工程はすべて、菓子職人たちの手作業で行われています。

 「ちいずくっきいは円を描くように絞り、ちいずぷっちいは少し押しつぶすようにのせていきます」

 一度にできる数はおよそ7000~8000個。これを2日から3日かけて包装までを工場で行い、お店にちいずくっきいが並びます。大変な工程は機械を使い、繊細な作業は職人さんの技がきらり光ることも「ちいずくっきい」の魅力です。

 「スタッフのみんなが好きなんです」と従業員の方を大切に思う石川さん。長くお店に「ちいずくっきい」がある理由のひとつは職人さんの技、働く人を思いやる“ほろほろ”としたやさしさでもあるのです。
ご恩を受けて、今があるから。心を込めて「伊那谷を贈る」
 「この場所でアルプスに囲まれながらご恩を贈りたい」

 2021年11月伊那市荒井小黒川スマートインターチェンジよりほど近い場所にオープンした、菓子庵石川アルプスファクトリー。「ファクトリー」とは「工場」を意味し、店舗内からは工場の様子がみえたり、ここにしかない焼きたての商品が並びます。伊那谷ならではの外観は、正面より向かって左側が“中央アルプス”右側が“南アルプス”そしてエントランスの上は天竜川をイメージし、雨が降ると北から南へ水が流れるよう傾斜があるのも特徴です。

 「山が本当に好き。雨の日は天竜川のようになって。冬は雪が屋根に積もるとそれもまたきれいです。」

 伊那谷を心から大切に想う石川さん。なぜ“伊那谷”であるのか尋ねたところ、少し呼吸を整えて話してくれました。

 「2015年、32歳のときに社長を引き継ぎました。その時5年後が2020年で創業100周年。節目のために過去の資料や写真を整理していたら、昔から街の中で支えられてきたこと、その時代、時代で伊那谷のみなさまに支えられてきたことがわかりました。ご恩を受けて今がある。だからこその伊那谷を贈る「ちいずくっきい」を大切に守り続け、次の世代へつなぎ、菓子庵石川を通して、ここにいる幸せ、この地の魅力を伝え続けていきたいと思います。」
<おすすめ商品プラス1>
 菓子庵石川では50種類以上のお菓子を取り揃えています。大切な方へ世代を問わず贈ることができる和菓子や、洋菓子。季節限定の商品も多くあり、お店を訪れる度に心踊る瞬間があります。なかでも「ちいずけぇき」は「ちいずくっきい」のケーキバージョン。ふんわりしっとり濃厚な味。ケーキはお祝いの時にぜひおすすめです。
◎菓子庵石川 通り町本店 
長野県伊那市荒井11
TEL 0265-72-2135
営業時間 9:30~18:00
定休日 日曜日
【アクセス】中央道伊那インターより車で約10分
駐車場は最寄りの「セントラルパーク駐車場」をご利用ください。

◎アルプスファクトリー
長野県伊那市荒井4565-1 
TEL 0265-98-0153
営業時間 10:00~18:00
定休日 なし
【アクセス】中央道小黒SICより車で約30秒

◎ベルシャイン伊那直営店
長野県伊那市日影435-1
TEL 0265-78-0038
営業時間 10:00~19:00
定休日なし
【アクセス】中央道伊那インターより約17分
◎ホームページ  http://kashianishikawa.com
◎インスタグラム kashian_ishikawa
◎YouTube「菓子庵石川」で検索

*内容は令和5年2月現在の情報です。