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#4 高遠城址公園(大宮のぞみ)
「高遠の桜」

高遠城址公園の桜と聞いて思い出すのは、高校生のころ。
高遠城址公園のすぐ隣、高遠の美術館で
桜の時期にカフェのアルバイトをしたことがある。

お仕事は目まぐるしかったけれど、
満開の桜を見たあとのお客さんは
みんな頬を桜と同じ色に染めて
あたふたと慣れない高校生の接客にも
「いいのよ、ゆっくりで。
こんなに桜が綺麗なんですもの」
と口々に言って空を仰ぎ見るのだった。

桜には、万人を幸せにする力がある、
なんてことを考えたあの春からは、
もう遥か遠い時間が流れた。

あの頃17歳だったわたしは
もうすっかり大人の一員だ。
我が子を連れて、久々に訪れた高遠城址公園は
4年ぶりの花見客を受け入れる準備に大忙し。

桜の木々は、
あの頃と変わらず、今も昔もそこにあり
昔を懐かしむ私の記憶より
もっともっと、遥か昔から
たくさんのひとを幸せにして
今日もここ高遠に花を咲かせ

あなたの笑顔をまっているのです。
大宮のぞみ

イラストレーター 
長野県駒ヶ根市生まれ
外国語大学スペイン語学科卒、
マドリード留学を経て
2011年に駒ヶ根市にUターン。
2人の子供を育てながら
伊那谷の美しさに囲まれて日々を暮らしています