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#13 雲の上へ(大宮のぞみ)
耳もとで風が鳴る

山肌が照らされてぴかぴかと光る
私は風に飛ばされないよう帽子を押さえつつ
友の隣に立った。
足元をよく確かめて進まないと、
油断したらごろごろした石で足を挫きそうだ。
記念の写真を撮ったのに
眩しくて画面がよく見えない。
地上に戻ったら送ろう、と画面を閉じて
再び別世界にひたる。

「山の上で飲むビールは最高だよ」
とある日の平日、友人とそんな話になった。
どうやら山登りにハマっているらしく
話を聞いているうちに、あれよあれよと
本当に行くことになった。
「靴は絶対スニーカーで!!」
「なんか、ウインドブレーカーとかある?カッパとかでもいいや」
「あ、あと帽子!」
矢継ぎ早にメッセージの通知が来て、
いそいそとリュックに荷物をつめたのは
つい昨日のことだ。

高速バスから山道を上るバス、
絶景のロープウェイを経る。
2人で乾杯したビールは
もちろん格別だったけれど
街におりて、噛み締めながら
飲んだコーヒーと甘いケーキ。
これも最高の思い出の味となったのです。
イラスト・文

大宮のぞみ

イラストレーター 
長野県駒ヶ根市生まれ
外国語大学スペイン語学科卒、
マドリード留学を経て
2011年に駒ヶ根市にUターン。
2人の子供を育てながら
伊那谷の美しさに囲まれて日々を暮らしています