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南アルプスの貴公子 東駒ヶ岳(甲斐駒ヶ岳)①
長野県伊那市と山梨県北杜市にまたがる東駒ヶ岳は、北沢峠を挟んで対峙する仙丈ヶ岳と共に、南アルプス北部山塊の中で特に際立った存在感を示しています。
伊那市から望む東駒ヶ岳
「日本百名山」を著した深田久弥(ふかだ・きゅうや)をして「もし日本の十名山を選べと言われたとしても、私はこの山を落とさないだろう」と言わしめたそのピラミダルな姿から「南アルプスの貴公子」とも言われ、悠然とドレスを広げる「南アルプスの女王」仙丈ヶ岳とは好対照な山容です。
伊那市から望む南アルプス北部の山々
その標高は2,967mあり、日本各地の「駒ヶ岳」と称する山々の中では最高峰です。西に聳える中央アルプスの「西駒ヶ岳」が2,956mでこれに続きます。国土地理院地図では両山ともに「駒ヶ岳」と記され、それらを東西に戴く伊那谷では、それぞれを「東駒ヶ岳(東駒)」「西駒ヶ岳(西駒)」として呼び習わしてきました。
二児山から望む東駒ヶ岳
将棊頭山から望む中央アルプス西駒ヶ岳
南アルプスの山々は全体としては太古には海底にありプレートの造山運動によって隆起を続け高峰となりました。そのため、砂岩・頁岩(けつがん)・粘板岩などの堆積岩が多く、黒っぽい山肌をしています。しかし、この東駒ヶ岳や鳳凰三山などの早川尾根の最北端に位置する山々は火成岩である花崗岩から成り、常に山肌が白く望まれることも特徴的です。
直登ルートより望む鳳凰三山と富士山
東駒ヶ岳は、まるで独立峰であるかのように屹立しており、この山の頂からは、眼前の南アルプスのみならず、富士山、秩父山地、八ヶ岳連峰、妙高戸隠連山、北アルプス、中央アルプスなどの日本の主要な高峰を眺めることができます。「南アルプスジオパーク」の一角として悠久の大地の営みに思いを馳せるには最高の地の一つであると言えるでしょう。
東駒ヶ岳より望む南アルプスの山々
修験の山
この山を語る中で忘れてはならないのが山岳信仰、特に山中での厳しい修行を重ねる「修験の山」であることです。山梨県側の、大己貴命(おおなむちのみこと)を祀る横手駒ヶ嶽神社から山頂に至る登山道「黒戸尾根ルート」は、日本三大急登(にほんさんだいきゅうとう)にも数えられ、その急峻で長い道のりには、数多くの石仏や祠、石碑が祀られています。

登りつめた山頂の南側には、本尊(=山頂)を支える脇侍(わきじ)として「摩利支天」(まりしてん)が聳えています。山頂から遠く西方に望む御嶽山や乗鞍岳も摩利支天を従えており、山岳信仰の古い歴史に思いを馳せながら雄大な眺望を楽しむのも一興です。
摩利支天